森満 保博士「頭鳴の診断と治療」 

森満 保博士「頭鳴と耳鳴の病態について」


森満 保博士に聞く「耳鳴と頭鳴、血栓との関係」 


「頭鳴の診断と治療」
森満保博士からのご報告(第117回日本耳鼻咽喉科学会通常総会・学術講演会)

2016年5月18日から21日にかけて、名古屋国際会議場にて、第117回日本耳鼻咽喉科学会通常総会・学術講演会が行われ、宮崎医科大学元学長、耳鼻咽喉科 名誉教授の森満 保博士による発表がありました。発表の概要についてまとめさせていただきます。

「頭鳴の診断と治療」

目的 現在、日本の耳鼻咽喉科関連学会では、頭鳴と耳鳴は同一疾患として対処されている。頭鳴という言葉は、一般的に公認されていない。
約20年来、森満博士ご自身、頭蓋内で鳴り続けている頭鳴りがあった。それがフィブリン血栓溶解酵素(線溶活性化酵素)粉末を含んだミハラルベルスの内服で治癒した。
その過程を報告し、耳鳴りとは明らかに異なった病巣部位と病態である頭鳴の独立を提案したい。
森満博士の頭鳴りと聴覚 頭鳴りはシャーシャーという白色雑音性で、若干の変動はあるが24時間継続。一方、時にピーという片耳での耳鳴りが別個に起こっている。
聴覚検査では、85歳相応の生理的なハイトーンロスはあるが、メニエル病などの耳鼻咽喉科の既往歴はない。


ミハラルベルス服用による頭鳴りの治癒経過

聴覚野での音情報処理法から見た頭鳴の条件 原音はまず、蝸牛で構成純音にバラバラに分解され、そのまま聴覚野に伝達される。
最初のニューロン層で元の原音に戻される。その後は、各層で順次に単語・文章と再生され、前頭前野に送られ、その内容に応じてしかるべき信号が発信されている。
つまり、白色雑音性頭鳴では、原音なしに、第一層のニューロンすべてが興奮し続ける状況を想定しなければならない。
アストログリアと前・後ニューロンの3者間シナプス 前ニューロン(神経線維)から放出されたグルタミン酸(神経伝達物質)によって後ニューロンが興奮するが、ニューロン数を倍する数のアストログリア細胞もグルタミン酸を再吸収しまた放出することが最近明らかになった。
アストログリア細胞は一方は細動脈に巻き付いて栄養と酸素を受け取り、もう一方は多数の神経線維(シナプス)と接触して神経伝達を助けている。また、アストログリア細胞同士はつながり、広範囲に反応を連鎖している。つまり、聴覚野全体の活動をアストログリア細胞が共調してサポートしているわけである。
アストログリア細胞による放出グルタミン酸の回収やグルタミン酸→グルタミンのリサイクルなど、きわめて潤沢な血流が不可欠である。
アストログリア細胞の細動脈からの栄養の受け取りが滞れば、その働きに支障をきたすことが考えられる。
血栓性血流障害による頭鳴の発症機序 血栓性血流障害のため、グルタミン酸が再吸収されず、シナプス内に溢れている状態だと考えられる。その結果、すべての後ニューロンがアトランダムに興奮し続け、前頭前野ではホワイトノイズ様の頭鳴として認識されるものと思われる。